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02話田ん坊や
「①」
ーー石山県野薔薇市田丸町内16時37分ーー
田舎の夕暮れの田んぼ道。
超ど田舎なので住人はあまり見かけない。
ここら辺も少子高齢化の波がきている。
そこに俺、鼻木和馬は飼い犬の草犬ポン酢と散歩中である。
「鼻ちゃん。こんにちわ」
「こんにちわ。吉おばちゃん」
すると顔馴染みの吉岡さんと遭遇した。
吉岡さんは買い物の帰り道だった。
吉岡さんとはご近所であり、俺が生まれる前にずっと住んでいる。
あと、世話焼きの人だからよく親のように親しみがあったからな。
と、吉岡さんと世間話してるとどこかで赤ん坊の泣き声が聞こえてくる。
そう、オギャー、オギャーと泣いてるのがわかる。
「どうしたんだい?鼻ちゃん」
「ああ、なんか赤ん坊の泣き声が気になって……」
すると吉岡さんはニコと微笑んで。
「……そいつは田ん坊やね。そうかそうか鼻ちゃんは聞こえるかい」
俺の背筋が急にゾクッとするような寒気が感じた。
「……その田ん坊やについて詳しく教えてくれませんか?」
「ふふふ。あれはそうだねー」
吉岡さんは怪異談語りを趣味としてる。俺が幼い頃からよく怪異談を聞かせてもらったからな。
そこで田ん坊やについて詳しく語らせてくれた。
「②」
晩遅くの田んぼ道。
カエルや虫の鳴き声が聞こえてくる。
私の名前は山原恵理子。24歳。
仕事の残業夜分遅くにコンビニに立ち寄って夕食の弁当を買って徒歩の帰り道である。
精神的も肉体的にもクタクタである私は眠気も感じでいた頃に何やら赤ん坊の泣き声がするのである。
(オギャー、オギャー、オギャー)
一瞬、空耳なのかなぁと思っていたがたしかにはっきりとちゃんと赤ん坊の泣き声が聞こえて頭の中に響くのである。
(オギャー、オギャー、オギャー)
だんだんと頭の中から大きく響いてくる。
この不快にも取れる泣き声を両手で防いでも聞こえてくる。
どこから聞こえてくるのか、周囲を見渡すと見つけた。
ーー田んぼ内にいくつか開かれた口がある赤ん坊が……。
私はそれを見た同時に白目をむきながら、そこからオギャー、オギャーと鳴いて目元から黒い液体が流れていた。
「③」
「……という怪異談ね」
その怪異談を聞いた時に背筋からゾクッとするような寒気を感じた俺。
「その田ん坊やを見かけても知らんぷりすればいいですよね。ははは」
するとあの泣き声がした赤ん坊がピタリと泣き止んだのだ。
「……ふふふ」
吉おばちゃんは不気味に静かに笑っている。
そして俺の背後から何かの気配が感じるのだ。
そう得体の知れないナニカが……。
俺の額にうっすらと冷や汗が流れ落ちる。
俺はその場で何も振り向きせずにそのまま帰宅するが飼い犬であるポン酢が繋がれたリードからいなかったのであの田んぼ道に向かうのは嫌だったがもう一度現場に向かい探す。
すると、見つかった。
ポン酢の身体中にいくつか口を開かれたまま死んでいるのがな。
そして吉おばちゃんはその日以降行方不明になった。
「④」
ーー鼻木和馬の自宅ーー
「という怪異談だな」
と、部長、高波そして新たに入部してくれた猫見蜜柑と4人で怪異談を披露したが部長はそのまま白目を向きながら気絶している。部長は怖い話に関しては超ビビりだったからな。
そして、俺の飼い犬ポン酢が部長の顔を舐めている。
あ、そうそうポン酢おろか吉おばちゃんはいまだに健在であるし、この怪異談は創作であるからな。ちなみにおっぱい絡みは実話怪異談なんだけど俺の語る創作怪異談に関しては怖さ度合いが違うのは納得できないな。
さてさて、今回の怪異談はこれまでだ。またな。
田ん坊や 完
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