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21 私はあなたに愛を囁く
念願叶って柊真は店を持った。
専門学校時代の友人たちに声を掛けて、人を集めた。その時に柊真は、これまで知らぬ間にその友人たちに恩を売り歩いていたことを知った。
専門学生当時、女ばかりの教室で柊真の高身長は役に立った。また、力仕事も率先してやった。加えて、課題はいつも手伝う側だった。
「木瀬君には男を感じなかった。木瀬君は私たちをそういう目で見てなかった。だって、ねぇ」
目配せをし合う彼女たちは柊真を見上げて意地悪く笑った。
「木瀬君は『相良さん』が好きだったんだもんね。いつも言ってた」
柊真は苦笑する。あの頃から気付かない内に周囲を巻き込んでいたのだ。
しかも、そのおかげでいつの間にか男女の友情が成立していた。何がどう転ぶか分からない。
柊真は彼女たちと損得勘定を一致させた。
店は、子持ち主婦の再雇用先としてローカル番組に出た辺りで軌道に乗った。
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