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「一度買い物に行った方がいいわね」
と相良が言った。
「ついでに何か食べに行きましょうか」
その日は日曜だったので昼まで相良が部屋にいた。二人で近くの商店街へ行った。相良は店の説明をしてくれた。便利な惣菜屋、シャッターが閉まっている店の内情、愛想の悪い店主がいる店、価格帯の良い量販店。
その時、知らない男が相良の前を塞いだ。
「話がある」
先日の男とは違う男だった。
「それは弟か?」
相良は男を避けて、黙って歩き続けた。
男は柊真が見えていない様だった。食い下がって相良の名前を連呼して懇願していた。
「春、もう一度話をしたい」
突然、相良が足を止めた。柊真もそれに並んだ。
「全部お金返してからにして。どっか行って。そうじゃなきゃまた喚き散らすわ。人が集まるかも。警察が来るかも。いいの?」
相良が毅然として言うと、男は引いて行った。
男が去ると相良は平然として話を続けた。その顔は少し青白く見えた。
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