あなたを観察したいのです

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 筋肉を愛するようになったのは、二年前。 中等部からの一番の友人である時東(ときとう)寧々(ねね)に貸してもらった雑紙を見てからだ。 それには、理想の筋肉という題材で、スポーツ選手や筋肉を売りにした芸能人が数多く映っていて、櫻子は何て素敵なの……!と目を奪われた。  自身にない男性特有の筋肉の付いた均整の取れた体は、逞しくて素晴らしい。 周囲には父や兄を含め親族には華奢な男しかいないため新鮮で、世の中にはこのような体もあるのねと食い入るように見つめた。  それからというもの、櫻子は男性の体つきに目がいくようになった。 道を歩いていても電車に乗っていても、気になるのはそればかり。 密かに見ず知らずの男性を観察しまくる毎日で、理想の体と出会えた日には嬉しくて上機嫌だった。 しかし、それだけでは足らなくなる。  櫻子の通う私立の学校は周囲からお嬢様校といわれているが、蓋を開ければそんなことはなくて、皆実家が裕福なだけで、普通の女学生となんら変わりがない。 異性の目を気にする必要がないため、性的な話題などは平気で話すし、彼氏持ちも多いので驚くような経験談も耳に入ってくる。 櫻子自身は毎回興味ありませんという涼しい顔をしているが、本当のところ耳をダンボにして聞いていて、次第に理想の体と触れ合う妄想をするようになったのだ。
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