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そんな櫻子なので、日下部では彼女の欲望を満たすことは難しいだろう。
どう見ても彼の胸板は薄く筋肉質ではない。
また、半袖のワイシャツから覗く腕も細くて逞しさはまったくない。
華奢に見えても脱ぐとすごい……なんてことも今の話からは期待できない。
日下部は父の見立て通りの素晴らしい男性であるのは伝わったが、櫻子はまったく魅力を感じられなかった。
結局、彼は父の意向で夕食まで食べていくことになり、夜遅くまで相手をすることになる。
ようやく帰宅する頃には「櫻子さん、またお会いできるのを楽しみにしております」と言われてしまう。
日下部には申し訳ないが、櫻子の中で次はないので、無言で微笑んでみせたのだった。
「櫻子、どうだった?彼はいい男だろう?」
父は自慢げに言うが、ここで肯定してしまえば彼が夫候補になってしまう。
それは絶対に阻止したい。
「とても素敵な方だけど、私はもっと他の方も見てみたいわ」
「……そうなのか?パパとしては日下部君はとびきりいい男なんだが」
父の言うことは尤もだ。
筋肉がないという以外は、欠点を見つける方が難しい。
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