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夏休みが終わり大学が始まったある日、櫻子は駅から大学へと向かう道を歩いていた。
結局あれから櫻子は筋肉男性と知り合える方法を思い付けておらず、どうすればいいのかしらと頭を悩ませる日々。
今もそれについて考えており、ぼんやりとしていたせいで、向かいから歩いてきたふくよかな女性と体がぶつかってしまう。
ふらりとバランスを崩した櫻子は、その場にドシンと尻もちをついた。
「痛っ……!」
予期せぬ衝撃に顔を歪めながら尻部を擦ろうと抑えた時、ワンピースが破れていることに気付く。
運悪く潰れた空き缶の上に乗ってしまったせいだった。
「……どうしよう」
ぶつかった女性は既におらず、通行人がチラチラと彼女を見ているものの、誰も手を差し伸ばそうとする者はいない。
目立つことを避けてきた櫻子にとって、痛みよりも恥ずかしさで涙が出そうになる。
早く立ち上がらなきゃと思うのに力が入らないし、破れたワンピースが気になる。
もっと注意深く歩いていればよかったと後悔していると、「大丈夫ですか?」と一人の男性が櫻子の前に腰を下ろした。
俯いていた顔をハッと上げると、目の前に若く端整な顔立ちの男がいて、「立てますか?」と問いかけてきた。
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