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「大丈夫ですか?もしかして、気分でも悪いですか?」
だがその時間は、一旦終わりを迎えてしまう。
見ず知らずの人間を抱き留めたままなんて、彼からしたら落ち着かない状況だろう。
心配そうな面持ちでいる彼の目を見て、櫻子はようやくハッとしたのだ。
だが、近距離に好みの筋肉がある。
その上、夢に見た状況で心が浮き立つ。
こんなチャンスは滅多にない。
二の腕の筋肉の盛り上がりは最高に素晴らしく、はち切れんばかり。
まるで触ってごらんと誘っているようだ。
決してそんなことはないのだが……。
この機会を逃すと絶対に後悔してしまうに違いないと思った櫻子は、恐る恐る彼の筋肉に手を伸ばしてそっと掴んだ。
あぁ、なんて固いの!
想像していたものよりずっと素晴らしい感触だわ……!
鋼のような筋肉って本当に存在するのね!
男性は突然触れられたことに驚き、ビクッと体を揺らしたが、そんなことは今の櫻子には構っていられることではない。
「大丈夫ですか……?」
何度も繰り返すが大丈夫ではない。
「あの、申し訳ないですが……もうしばらく掴ませてもらってもいいですか……?」
「え……!?」
彼はひどく驚いていたが、欲望に抗うことができない。
櫻子は上目遣いに彼を見つめ、「えっと、体がふらっとしてしまって……」と嘘を口にした。
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