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顔を上げて日下部を改めて見て、櫻子は心の中でため息を吐いた。
やっぱり私の好みじゃないわ……と。
父の話していた通り、歳より若々しく見え、目鼻立ちが整っていて一般的にはカッコいいと呼ばれる顔立ちをしている。
髪は短く耳に掛からない程度に整えられ清潔感を感じ、穏やかな笑みを浮かべ優しそうだった。
いかにも父が選びそうな男である。
「日下部君、よく来てくれたね。わざわざ休みの日に悪かったよ」
「とんでもないことでございます。お招きいただき光栄に思います。本日はありがとうございます」
腰が低く礼儀正しいのは本当のよう。
多少の猫は被っているだろうが自然だ。
父は上機嫌な笑顔を浮かべながら、日下部をこちらに来るよう誘った。
「日下部君、この子が娘の櫻子だよ」
日下部は一七五と平均的な身長だが一五七の櫻子より高いので、上目遣いに彼を見つめる。
同じく彼も櫻子を見つめるが、まるで何かに驚くように目を見開いているので不思議に思う。
自分は何かおかしいのかもしれない……と若干不安を覚え父に視線を向けると、ハハッと笑う。
こちらは何もおかしくないというのに。
「櫻子が可愛い子で驚いたんだろう?」
何てことを言うのだと、櫻子は驚き目を瞬いた。
親バカな面があることは重々理解しているが、部下を巻き込むなんてあんまりである。
「はい、驚きました。社長から可愛いお嬢様とお聞きしておりましたが、想像を遥かに超えていて魅入ってしまいました。無礼をお許しください」
ほら、気を遣わせてしまったではないか。
櫻子は父を小さく睨んだ。
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