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また、天気予報が外れた。
2日続けて一日中雨の予報だった。
時には雷が鳴るかもと。
しかし1日目は早朝に少し降って、その後は、すっかり晴れていた。
2日目は、昼間に10分ほど土砂降りがあったが、それ以外は痛いような日差しが地面を照り付けていた。
雷はならなかった。
「無駄よ」
空を見上げる僕に彼女は言う。
「天気予報なんてあたらない。判ってるくせに」
涼しい顔でそう言う彼女をしばらく見つめて、僕は言う。
「そうだな」
もう、人に予測などできない。
自然は人をあざ笑うように、不意の豪雨や烈風や日照りで人を襲う。
ここにきて彼らを蔑ろにしていた報いを受けている訳だ。
「でも、気まぐれに雨を降らせてくれるかもしれない」
「やめてよ。去年の嵐を忘れたの?」
「忘れてないよ」
「ゾーイが死んだのよ」
「判ってる」
「もう、あたりまえの季節は終わったの」
僕は彼女の頬にキスをした。
彼女の涙は少し塩の味がした。
普通に雨が降り、普通に雨が上がり、普通に虹が出る。
そんな穏やかな世の中は終わった。
でも、僕はまだそんな当たり前のことが、いつかは戻ってくるんじゃないかと、まだ、期待している。
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