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#1 目覚め
目を覚ますと、私達は見知らぬ部屋にいた
前日に何をしていたのかすら、なぜだか思い出せない
思い出せるとしたら自分の名前と数日前のこと…特に何か持っているというわけでもない…
手元を見ると記憶にある服装やピンなどのアクセサリー系統だけだった
各ベッドに目をやると、ひどく唸っていたり、既に目を覚ましていたのか不安そうに周囲を見ていたり…はたまた頭痛を起こしていたのだろうか、耐えつつ目を覚ましたりしている
1番異色を放っているのは…気がついて混乱しているのか、室内を動き回っている柴犬がいること
目の前の情報をなんとなく理解したあと、周りを見渡すと【扉・人数分+2のベッド・少し高い位置に窓】がある
探索をする必要がありそう…
だけどなんだか室内が騒がしいような…
そう思った私は騒いでいる方面へ顔を向ける
そうすると…
シバ『何こっちをじっと見てるんだ?』
…そう、犬が人の言葉を話しているのだ
大牙『えぇ!?犬が喋ったんだけど!?』
叶多『嘘…そんなことある!?』
零『………』((汗
とんでもない光景を目にしたけど、すぐさま冷静になれた私は人一倍唸っている状態の男性に声を掛けた
零『…大丈夫ですか?』
アーノルド『くっ……うぅ……』
零『…もしもし?聞こえてますか?』
アーノルド『……はっ!?な…なんだ…!?し、柴犬が…人の言葉を話す夢を見た気が…』
零『あぁ…その子でしたら、あそこにいますよ』
そう言って私は柴犬のいるところに指を指す
アーノルド『はっ…ははは…な、何を言っているんだ九条…犬が喋るわけがないだろう…』((困惑
うん…ごもっともな反応ですよ、アーノルドさん…
シバ『……何を言っているんだ??』
アーノルド『ほんとに喋った…いや、これはきっと夢だろう…そうに違いない、そうに…』
そうぶつぶつと言いながら、アーノルドさんはベッドに戻って行った
零『ちょっと…また寝ようとしないでくださいよ…』
アーノルド『いや、これは夢だ…そうに違いない…!』
と言って、私の制止を振り切ったアーノルドさんはベッドに強く飛び込んだ
その刹那
ザシュッ…
と鋭利なもので貫くような少し鈍い音が寝室内に響いた
零『えっ…?』
音の方に目をやると、アーノルドさんが腰部分を抑えている姿と、出血を確認した
零『えっ…ちょ…アーノルドさん!?』
突然のことでびっくりだったのだが、即座に応急手当を施した
アーノルド『いやぁ…びっくりした…私のマジック道具…ではなさそうだが…』
零『そんな淡々と話さないで頂きたいですね…、これで応急処置は済みましたから…』
アーノルド『あぁ…すまない…でも、なんだ一体…』
アーノルドさんがベッドの上を調べた瞬間…
1本の【肉切り包丁】が置かれていた
零『なにこれ…包…丁…?』
叶多『え…っと…ちょっと…いいですか?』
零『どうかしたの?』
叶多『えと…実は九条さんがアーノルドさんを治療していた時にベッドを調べてみたんですけど…これ…』
叶多は恐る恐る発見した物を手に取った
そこで私達が目にしたものは…
1本の【肉切り包丁】だった
零『え…そっち…にも…?』
叶多『これ…どうします…?』
アーノルド『何かあってからでは遅い、持っていてもいいと思う』
零『そうね…そうした方がいいのかも』
(他に…何かないかしら…)
(そう…【拳銃】とか…)
そう思って周囲を探してみたのだけど…特に目ぼしい物は見当たらず、【肉切り包丁】の数が増えていくばかりだった
大牙『そいや俺…窓、調べてみたんだけどさ…なんかおかしかったんだよね…』
アーノルド『おかしい…と言うと?』
大牙『いやほら…夕焼け…と思ったけど、どうやら違うようで…よく見たら、オレンジ色の煙…みたいなものがこの辺りを充満させてるようで…』
零『…煙?』
大牙『夕焼けにしちゃあ…モヤモヤしてたというか…』
事情を聞くやいなや、扉方面から私達を呼ぶ【1匹】の声が…
シバ『なぁなぁ、この先からいい匂いするー』
犬は犬…といったところか、嗅覚は正確なようだ…
零『この先は…一体どこに繋がってるのかしら…』
大牙『うし!これでシバがどっか行くことはないな!』
叶多『…なにしてるの?』
大牙『え?シーツ引き裂いてリード作って付けた!』
アーノルド『ずいぶん器用なことするんだな』
シバ『なぁなぁ、早く行こーぜー』
零『…行ってみましょうか』
シバの導きに従って、私達は寝室を後にした
その扉の先には…とある光景が広がっていた…
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