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いつもの集合場所につく。
小学校の運動会でダンスなどのだしものを行えるほどの広さの空地。
その集合場所に軍隊で兵器や人を輸送するような、前と後ろにプロペラがつけられた大型のヘリコプターが待機している。
黒いスーツを着込み、電話をかけている上司。
上司のうしろには、迷彩服をきこんだ男たちが二人たっている。
街中で迷彩服は、とても目立つのではといつも思っている。
その迷彩服をやぶる勢いでもりあがった筋肉。
さらにマシンガンを手にもちあたりを威嚇している。
マシンガンの名前は教えてもらった。たしかアルファベットと数字で構成された名前だったはずだ。
ヘリコプターのなかに足をふみいれる。
ヘリコプターのなかは、からっぽのドラム缶のようにガランとしている。
五右衛門を100人ほど煮殺せるほどの広さ。
ヘリコプターの両サイドには、黒いビニール製の細い席が設置されている。
同僚はすでに10人ほど集まっており着席している。
あいているスペースににすわりシートベルトをはめた。
上司とマシンガンをもった二人もヘリコプターにのりこんできた。
「レッドブルが、殺した人間たちの掃除だ」
マシンガンをもった一人の男が、ヘリコプターの機械を操作した。
ひらいていたヘリコプターの搭乗口がゆっくりとしまる。
となりにすわる人間の声すらも聴こえないほどの轟音が暗い室内にひびきわたる。
ヘリコプターは、重力にさからい地面をはなれた。
ヘリコプターがどこかに着地した。ヘリコプターに窓はない。
高層ビルのはるか上空を飛ぶヘリコプター。そこから見る景色は、さぞかし絶景だろう。
けれども、いちども景色を眺めたことはない。
ヘリコプターの後部がひらいた。ヘリコプターからおりる。
高層ビルの屋上だと気づかされた。
視界をさえぎるものが、おなじ高層ビルの上部しか見えない。
「現場は、ここから4フロア下だ」
「まだ現場にレッドブルもおり、興奮状態だ、気をつけるように」
上司がちらりと私を見た。
現場に足をふみいれる。
できたてホヤホヤの廃墟が、目のまえにひろがっていた。
天井の板は、いまにも負けそうなオセロの白色のようにはがれ落ちている。
板がはがれ落ちたところからは、赤と青、黒色のケーブルが、筋肉の繊維のようにたれさがっている。
昼間は100人規模の人間が、デスクにすわりパソコンを操作し、電話をかけ、いそがしそうに仕事をしていたのだろう。
デスクと椅子は、かんしゃくをおこした子どもが遊んだ積み木のように散乱している。
ゲームに負けたはらいせにパンチをおみまいされたようなモニターは、チカチカと抗議の火花をあげている。
電話がコンクリートの壁にささっていた。受話器がぶらぶらと風にゆれている。
無機質なあたらしい廃墟のところどころに赤い液体がちらされている。
レッドブルに殺された人だったものだろう。
新人の同僚が、食べたものを吐きもどしている音が耳にとどいた。
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