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ドアベルが、カランカランと鳴る音がした。
シトラスは立ち上がった。
「今日まで、バイトちゃんとしますよ。そしたらいったん帰ります」
「シトラス……」
「宮廷には先生の居場所も、ミルシェットの秘密も内緒にしておきます。僕も足跡を全て消すので、ご安心ください。もうヘマはやらかしませんよ。今日のことは先生の足跡を追うあまりに自己管理ができていなかったのが原因です。反省して改善に努めます」
「……ありがとうございます。苦労をかけますが、よろしくお願いします」
「先生」
シトラスは部屋を出る前に、改めてクリフォードを見た。
「……先生の暮らしは守ります。僕は宮廷で狡猾な歯車となって、先生の箱庭(せいかつ)を守りますよ。お偉いさんに媚びるのは慣れているんです。先生とはちがってね」
「頼もしい限りです」
成長した、頼もしい笑顔を向けるシトラスに対して、クリフォードは眩しいものを見るように目を細めた。
「……私は、良き弟子に巡り会えましたね」
◇◇◇
結局、シトラスさんがいたのは二週間ほどだった。
「あの美少年、もうバイト辞めちゃったのかい~」
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