【第一部完結】のらねこ薬師と魔術師パパの、癒やしのねこねこ隠れ家カフェ~これからは家族で楽しく人生やり直しましゅ、宮廷にも裏組織にも帰りませんにゃん~

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 長い黒髪をゆるくくくって、うさんくさい眼鏡とうさんくさい笑顔のおじさん。  こうして客観的に見ると、カマーベストにアームサスペンダー、すらっとしたトラウザーズといったその立ち姿は、本当に綺麗だ。  宮廷の社交界とかで、色んな貴婦人とダンスしたりしたことはあるのだろうか。  シトラスさんが着ていたような魔術師の礼服を纏って、荘厳に佇んでいたこともあるのだろうか。  ――昔は、この人はどんな人だったのだろうか。  心の準備ができたら過去を教えてくれると約束してくれた。  そのことを思うと、胸の奥がぎゅっと甘いような、温かい気持ちになる。  シトラスさんのような親しい弟子ではなく、あくまで契約親子の私に。  嬉しいな。 「にみゃあ……」  一緒に過ごして親しくしているようで、契約だけの関係だと思っていた。  思い込もうとしていた。だってまた、娼館の時のように――居場所を失うのは、つらいから。  本当の親子のように、ほんとは、これからもずっと――  そんな物思いは、裏口から聞こえる元気なあいさつですっ飛んだ。
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