お縄になりますか、養女になりますか

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「この馬車は借りパクしてきただけなので、足は着きゃあしません。御者にもたっぷりお金を弾みましたので口外されることもないでしょう。そもそも金に目がくらんで勝手に馬車を出した時点で、彼も私と同罪ですしね?」 「あわ、あわわ……」 にっこにこでノーブルなこの男は、なにを言っているのだろうか。 優しげで、実際私を助けてくれたし、いい人っぽくはある。けれど転生前含めた人生経験が訴えてくる。この男はやばいぞ、うさんくさいぞ、と。 馬車の外は街の広場に出たようだ。 がやがやとした賑やかな昼下がりの賑わいと、噴水の音が聞こえてくる。 私は暴れるのを辞める。――外に出たらおしまいだ。これは意図的に、人混みの中に馬車が置かれている。 「あ、あの……おじさんの……望みはなんでしょう……」 「おじさんとは失礼な。一応まだ20代です。誰も信じてくれやしませんがね」 「ごしゃいからしたらおじさんでしゅ」 「ああ、窓の換気をしたくなってきましたねー、それドアを」 「ぴえええええやめてくらしゃいいいい」 私がおとなしくピシッと背筋を伸ばして座ったところで、彼はこほんと咳払いする。
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