お縄になりますか、養女になりますか

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がたがたと震える私の手を取り、今度は優しく目の高さを合わせて提案された。 「……私の養女になりませんか」 「え?」 「私は宮廷魔術師としての人生に飽き飽きしていました。もう逃げたくてたまらなくて。思いっきり辞表を叩きつけてやりましたが、問題は私のような超美形がその辺で独り身でいると色々と面倒だし、噂が立ちやすいのです。そこで養女です。どうですミルシェットさん。シングルファザーと愛娘して私と田舎に引っ込んで、10年の時効が切れるまで一緒に暮らしませんか?」 にっこりと笑うクリフォード。 手は柔らかく握られている。振り払おうと思えば、幼女でも簡単にふりほどけるほどの強さで。 ――けれど、私はとても振り払えなかった。 ここまで身元と能力を見抜いてきたこの男から、逃げられるとはとても思えなかったのだ。けれどはいと頷くことは、まだ怖かった。 黙ってなにも言わない私に、彼は優しく言った。 「宿を取りましたから、とにかく休んで、まともな食事を取りましょう。返事はそれからで構いませんよ」 優しいなあと思った。 しかしここで、彼を信じてしまったのが――私の最初の失敗だったのだ。
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