11 魔力交換

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「ええ……はい……」  ハクトがそれを望んだことに、チレの心臓がトクンと波立つ。異世界人の恰好は落ち着かないが、彼がやってみたいというのなら。  ハクトがチレを手招く。チレは彼の横にちょこんと腰かけた。ふたり見つめあって、ハクトが呪文を唱える。 「ヒトになれ」  するとチレの身体がしゅるるっと変化した。 「あ……」 「おおっ」 「何と」  神官長とトトが感嘆の声をあげる。  チレはこの前と同じく、異世界人の姿になっていた。手足は長く、肌はうすい桃色で、ふわりと揺れた髪は明るい栗色をしている。 「……何だか、恥ずかしいですね」  不思議な気分で自分の身体を眺めた。  短くなったローブから出たむきだしの部分がスウスウする。モジッと上半身を捻って隣に視線を移すと、ハクトは目をみはってこちらを見つめていた。黒い瞳をまん丸にして。 「……え? 何ですか? どこかヘンでしょうか」  チレがたずねると、何故かハッと身体を弾ませて、それから視線をさまよわせる。 「あ。や。いや。別に。ヘンではない」  ぎこちなく手をあげて否定した。 「では、同じ異世界人になったのなら、その、愛しあう行為というものができるわけですね」  トトが嬉しげに言った。 「どうぞ、試してみてください」 「えっ。お前らが見てる前で?」  ハクトが嫌そうに眉をよせる。 「そ、そうでございますね。では我々は失礼して。結果がわかればまたご報告ください。変化がなければ他の方法を考えますから」 「儂らは隣の部屋で待機しましょうか」  神官長とトトは挨拶をしてそそくさと部屋を出ていった。  残されたハクトが、ちらりとチレに視線を移して言った。 「……しょうがねえな」  困り切った声で呟く。 「じゃあ、ちょっと、さわりだけやってみるか」  咳払いをして、姿勢を正す。その目元は少し赤らんでいた。 「……さわりと言いますと?」  チレが首を傾げる。すると肩まである栗色の髪がさらりと揺れた。 「つ、つまりだな。その、……キ、キスだけしてみるかってことだ」 「あ、ああ、……なるほどです」  ハクトがいつもの俺様ぶりをなくして恥ずかしそうに言うものだからこっちも照れてしまう。
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