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白や灰色の質素なローブを着た仲間たちが口々に歓喜の声をあげた。全員で召喚聖堂に向かい、あけ放たれた大きな両扉を抜けて堂内に入る。中はしんと静まりかえっていた。
広いホールには大召喚師をはじめ、聖徒と多くの神官がいた。ホールの真ん中には魔方陣があり、それを囲んで誰も口をひらかず、厳かな雰囲気で立ち尽くしている。
人々の背後から、チレは背伸びをして魔方陣を眺めた。背の低いチレには向こう側がよく見えない。ひょこひょこと首を動かして隙間からのぞき見ると、星形の魔法陣の中にひとりの人物が確認できた。
床に描かれた、精緻な文様と古代文字。
その中心に尻餅をつくようにして座る人間。
ぽかんと呆気に取られた表情で周囲を見渡しているのは――。
「男だ」
チレは小声で呟いた。それに隣の神官が「シィッ、静かに」と注意してくる。
聖女は、黒髪に黒い瞳の若い男性だった。手足は長く、紺色の上下揃いの服を着て、首元から模様の入った細長い布を垂らしている。
しかし男であったが、今回の聖女は歴代聖女の中でも際だった美しい容姿をしていた。
自分が今まで仕えてきた四人の聖女。彼が五人目の主になるのか。
「☆@&%$#……」
聖女が声を発する。それは異世界の言葉だった。
「=☆‰£‡σ§仝#☆、○?#㏄ーÅφ」
意味不明な言語がホールに響き渡ると、神官らはハッと我に返ったようにあたふたし始めた。
前もって準備してあった木の板を何枚も取り出して、聖女の前に並べてみせる。木の板には羊皮紙が貼りつけてあり、そこには歴代聖女が異世界から持ちこんだ様々な種類の言語が書かれていた。
『いらっしゃいませ、こんにちは。ようこそお越しくださいました』
どれも一様に、そう記されている。
「¢☆‡㏍……?」
聖女は訝しげな顔つきになって木の板を凝視した。並んだ板を順番に眺め、やがて一枚に目をとめると、文章に沿って目玉を動かす。
それを見て取った神官は、「ニホン語だっ!」と叫んで、控えていた神官に『ニホン語』と書かれた箱を急いであけさせた。中から何枚もの板を取り出すと、アセアセと聖女の前に並べる。
『暴れないで、落ち着いてね』
『我々は、敵ではありません。あなたの味方です』
『我々は汚くありません』
『泣かないで、怖くなんかないよ』
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