11 魔力交換

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「まったくとんでもねえ奴らだ」  椅子に戻ってくると、怒りながら腰かける。チレは短くなったローブを膝下まで引っ張りながらたずねた。 「……で、では、続きを、するのですか?」  鼓動を早くする心臓が気になって身を竦め、上目で聞く。 「……」  ハクトがこちらに目を移し、そして視線を逸らした。眼差しは苛ついているように見える。黙ったまま落ち着きなく膝を揺らし、やがてぶすっとした調子で言った。 「続きをして、俺に魔力が戻ったら、俺とお前がしたことが、ハム人間たちにバレることになる」 「え?」  もちろんそうだろうが、バレて何か問題があるのだろうか。 「それはイヤだ」 「え? なぜですか」 「クソ恥ずかしい」 「…………」  チレは目をみはった。たしかにおおっぴらにするには憚られる行為だけれど、世界中の人が普通にやっていることだ。しかも今は魔力を戻すほうが大事だと思うが、それでも羞恥心のほうが勝るのか。  異世界人の恥ずかしさの基準がよくわからない。ハクトの言い分はまるで汚れを知らぬ乙女のようだ。それともこの人は、そういった方面ではまったく純真な童貞なのか。未経験なのはチレも同じだが、こちらは三百余年生きてきた知識の積み重ねがある。だからハクトほど繊細でもなかった。 「そうでございますか。では、どうしましょう?」  ハクトの顔はまだ赤らんだままだ。 「とにかく、キ……キスだけで、すむのなら、それで解決するわけだから、当分、そっちを試せばいいだろ」 「そうでございますね」  ほんのちょっぴり残念な気持ちがわいたのは気のせいだろうか。  そのとき、チレはまったく別のことを思いついた。 「もしかして、ハクト様は私が男だからイヤなのでしょうか?」  異世界人もルルクル人も恋愛対象は異性が一般的だ。 「え?」  ハクトがキョトンとする。そのままの顔でチレを見つめ、首を傾げて思案した。 「……いや、どうだろ。それは……別に……」  そして悩んでいる自分に驚いたように、目を瞬かせる。 「別に、いいだろ。そんなことは。どうせ男でも女でもやることは大体同じなんだし」  急に機嫌を悪くしたように立ちあがると、大股で寝室のほうへといってしまった。
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