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しかし、ということは、もしかしたら将来的にはあり得るのだろうか。ハクトがもらした言葉に、チレの心臓が一気に活発になる。彼との愛の行為を想像して、体温が上昇し視線が行き場を失ってウロウロとさまよった。
いけない。聖女に仕える敬虔な信徒でなければならない身なのに、異世界人との淫らなことを想像するなんて。
あれ? でも聖女に仕えると言うことは、愛の奉仕もその中に含まれるのか? だったら聖女相手なら淫らになっても構わないのか?
自分の思いつきにかるく混乱するチレを横目に、ハクトはハクトで何かを思い煩うように小さくため息をついた。
「どうなさいました?」
たずねるも首を振られる。
「なんでもない。もう寝る。お前はあっちいけ」
キスが終われば用済みなのか、シッシッと追い払われた。
「わかりました」
チレがベッドから立ちあがる。
「あ、ハクト様。元の姿に戻して下さいまし」
「ああ。忘れてた」
ハクトが指を振って「ハム人間に戻れ」と言う。するとチレはしゅるるんとルルクル人に変化した。
「ではおやすみなさいませ」
ぺこりとお辞儀をすると、上がけから顔を少し出していたハクトと目があう。
その瞳には、まだ何か憂いがあるようで、どうしてか熱く潤んでいた。
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