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「セットじゃないなら、どっかに運ばれた? 眠らされて」
ブツブツ呟いて、心配げに見守る神官に向き直る。
「ここ外国?」
「え。ええ?」
「てか、うざいなお前らその恰好」
神官のひとりの肩を掴んで、また持ちあげる。そしてブンブン振り回した。
「ひやああああ」
「脱げよ、このかぶりもの」
「かぶりものではございませんっ」
「何言ってんだ、このネズミのぬいぐるみどもが」
「ネズミでも、ぬいぐるみでもありませんっ」
聖女が手を離したので、神官はゴロゴロと吹っ飛んだ。それを仲間が助け起こす。
「我々は、このような姿をしているのでございます。あなた様から見れば非常に奇妙かも知れませんが、我々は、ルルクル人という人種なのです」
「はあ?」
盛大に疑問符を吐いて、聖女が皆を見おろした。彼の目の前には、怯える背の低い動物が見えていることだろう。歴代の聖女も、まずチレたちの外見に驚いた。
ルルクル人は、彼らの目には『大きなハムスター』として認識される見た目をしている。異世界人の三分の一ほどの背丈に、全身が獣毛に覆われたふわもこな姿。頭の上に生えた耳と小さな瞳。過去の聖女は皆、この姿に最初は驚いたものの、しかし慣れれば可愛らしい姿と愛でてくれるようになった。
『ペットみたい』
『ほわほわでぬいぐるみのよう』
『癒やされるわ。抱っこして寝た~い』
と言ったものだった。
だが。
「きっしょ」
当代聖女は顔を歪めて言い放った。
「ネズミの国とか。趣味悪すぎ。ドッキリなら他でやって。主催者訴えるよ?」
苛立たしげに髪をかきあげ、大きくため息をつく。
「遅刻確定じゃん」
呟いてまた鋼の板を取り出した。
「連絡だけは入れとかないと」
指先でチマチマ叩き、ふとその指をとめる。
「……圏外?」
訝しげにもらして顔をあげた。周囲を見渡し、不思議そうな顔のまま、また薄い板に向き直る。
「メッセージが飛ばない。なんでや」
聖女は目の色を変えて板を中指でこすりはじめた。何度も表面をこすって、そのうち絶望的な表情になる。
「なんでや」
聖女の声が震えだしたのを見て、神官らにも戸惑いが広がる。この後にくる事態を、ここにいる皆が過去に経験ずみだったからだ。
「どういうことなん?」
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