7.交換条件

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7.交換条件

 王都にあるタウンハウスに明かりが灯る部屋があった。  社交シーズンではないこの時期は、貴族は基本領地に戻るので、タウンハウスがある区域は閑散としていた。  人通りの少ない通りに馬車がやってきて、中からマントのフードをすっぽり被った男が降りてくる。  男はそのまま明かりのついたタウンハウスに入って行った。 「私を待たせるなんて良い神経してるわね」  家の中で出迎えたのはルイーザ王女だった。  男はフードを降ろして姿を現すと、その容姿は長い黒髪を後ろに一つに束ねた、褐色の肌をした異国の美丈夫であった。歳の頃はルイーザ王女とそう変わらなそうな、三十歳前後といった感じである。  ルイーザ王女は男を見つめながら聞いた。 「いつ会ってもその姿は変わらないのね。一体歳はいくつだったかしら?」  男は冗談なのか本当なのかわからない答えを言って笑う。 「今年で二百くらいかな」  男は腕を差し出し、ルイーザ王女はその腕に手を添え、男のエスコートで二階に上がって行った。ここは男の家ではなさそうだが、何度も来ているのか慣れた様子である。  二階には談話室があり、二人はその部屋で会話を始める。切り出したのは男の方だった。 「やっと我が国への支援をしてくれる気になったのか?」 「金銭的な支援は十年前からしています」 「十年前から、金銭ではなく技術支援をして欲しいと頼んでいるのだが」 「それは十年前にあなたが失敗したのだから、全ては叶えてあげられないのは仕方ないでしょ」 「失敗ではなく、リスクがあると伝えたはずだ。そもそも俺がいなかったらルイス王子は死んでただろ」 「とにかく、技術支援を行うにしても、アウルム国へ行きたがる者はいないと思うわ」 「そこをどうにかするのがお前達の役目だろ。俺はちゃんとルイス王子を助けた」 「そうね、では条件を出します」 「条件は十年前に果たしたと言ってる」 「それは金銭的な援助でこちらも返した。更に技術支援も望むなら、王太子殿下の身体を治しなさい」 「じゃあ、いい加減王太子に直接会わせろ」
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