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るるぶ
辰巳はパラパラとるるぶの東京版を手にレジに並んだ。
「なんで東京在住で東京のるるぶなんだよ観光客かよ」
「いえ、興味深い事が何点かありまして」
「あー、辰巳は福岡出身だからな」
「辰巳さん、今度観光案内しましょうか」
「頼む、この浅草に行ってみたい」
「東京都と言えば先ず浅草が鉄板だろ!なんで行かないかな」
「事務所と自宅の往復で十分賄えますから」
3人はそれぞれの手に駅弁を持って八重洲口のエスカレーターを上がった。北陸新幹線のホームは22番線から23番線、今回3人が乗車する<かがやき>は23番線ホームだ。
「すみっコぐらし」
「なんですかそれは」
「あ、知ってる。なんか丸い動物だろ、それが如何したんだよ」
「北陸新幹線ホームってこんなに隅なんですね」
「そうだな」
「なんだか寂しい感じですね」
「新幹線は派手なのにな」
新幹線の外観は青、白、銅色。るるぶ金沢版を捲っていた島崎が目を輝かせた。
「かっ、カッコいい顔ですね!」
「顔ぉ?」
「この流線型!」
瀬尾が雑誌を覗き込むと新幹線が斜め45度で大写しに掲載されていた。
「島崎は鉄道マニアですか?」
「いえ!違いますけれど今、なりそうです!」
エクステリアを彩る三色は北陸の青い空、九谷焼の白、象嵌細工に使われる銅色をイメージしているのだと言う。
「青空ぁ?」
「はい!るるぶにはそう書いてあります!」
「大智が言うには日本海側は曇天が多いらしいぞ」
「あっ、私、九谷焼なら知っています」
「白いのか」
「イメージとしては極彩色ですが、北陸の方はそう思われているのかもしれませんね」
「せめて雪の白、とかにしときゃ良かったのに」
3人はグリーン席を選んだ。
「あぁ、僕、一度グランクラスに乗ってみたかった」
「残念だな、今日乗る北陸新幹線のグランクラスはアテンダントサービスなし」
「えええええ」
「駅弁買って正解」
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