案件

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依頼人「仙石明穂」  といっても元同僚の弁護士、仙石大智が好き勝手にその女性の弁護人を買って出たと言う。 「大智らしいよな」  その依頼人の面差しは色白で絹糸の長い髪は薄茶色。華奢で長い手足は蜻蛉(かげろう)の様で儚い印象を受けた。 「なんだか目がぼんやりしてないか?」  茶褐色の瞳は視点が定まらず何処か覚束(おぼつか)なかった。 「あぁ、弱視だそうだ」 「なるほど」 「旦那はそれで好き勝手か、腹が立つな」  瀬尾、辰巳、島崎はグループライン画面をスクロールしながら(しいた)げられている妻の画像を繁々(しげしげ)と見た。 「ま、大智も初恋の相手となれば張り切るな」 「でもなんで同じ苗字なんだ」 「今は義理の姉らしいですよ」 「ややこしいな」  瀬尾は大智と同年齢でその雰囲気や言動は酷似しフットワークが軽い。 「ま、なんとかなるんじゃない?」  辰巳は寡黙(かもく)で上背もあり目力が半端ない、その手の弁護には重宝された。 「また私が大岡越前役ですか」  島崎は唯一の世帯持ちで3歳の娘の父親、慰謝料の提示額は際どく的確で常に電卓を持ち歩いている。 「不倫相手は大学教授の娘さんらしいじゃないですか、慰謝料はしっかり頂きましょう!」  そんな仲良し3人組が不貞を働く愚か者たちを断罪すべく東京駅にタクシーで乗り付けた。  
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