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rain
雨が降っていた。激しく、乱暴に。死ぬには、もってこいの日だった。
電車は夜の雨の中をなめらかに走ってゆく。
そう、私は、今日。死ぬ。もうこの街には戻るつもりはないし、次の雨上がりを見ることもない。二度と、永久に。
この日のために、いっぱいいっぱい考えた。たくさんたくさん考えて、今日ようやく「やる」って決めた。自分の全財産をはたいて、県境。あるいはそれ以上を行く電車の切符を買った。携帯の電源は電車に乗ると同時に切った。地元ではきっと今頃大騒ぎだろう。
見慣れた景色がいつのまにか知らない景色へと後ろ向きに移り変わってゆく。学校を終えてすぐ乗り込んだ、人がまばらな電車の中。携帯も、音楽も、本もなにも開かずにこんなにも長い時間、景色だけを見つめ続けることは生まれてはじめてだった。
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