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憎悪と作戦
北半球にある世界最大の大陸。そこにはいくつもの半島があり、東の方にある一つには、二つの国が存在している。
N国とS国である。
この二国は、半島を真っ二つにするように南北に分かれている。北側がN国で、南側がS国である。
N国とS国の関係は、すこぶる悪い。冷え切った氷の中に憎悪の炎が燃え続けているようなものである。
この仲が悪い二国だが、近年は戦争していない。和解したからではない。どちらも背後に大国が付いており、戦争しようものなら、どちらもただでは済まない、下手すると滅亡のおそれがあるからである。
そんなわけで、二国間には仮初の平和が続いているのだが、両国の間にある憎悪は健在であり、特にN国のS国に対するそれは、強烈だった。
――面白くない。
N国の総統は、会議中にそんなことを考えていた。
「いかがなさいましたか? 閣下」
総統の不機嫌そうな様子を見て、大臣が尋ねた。
「面白くないのだ」
ぶすっとした表情のまま、総統は答えた。
「何が……面白くないのでしょうか?」
「S国だよ」
「S国ですか? 確かに我々の不倶戴天の敵ではありますが、それは今に始まったことでは……」
「その通りだ。だが、最近のS国はどうだ? 景気がいいのか、国民全体が調子に乗っていると思わないか?」
「はい……」
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