不審物

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不審物

 N国との国境付近にある村。  ここに風船にくくりつけられたビニール袋が落ちてきた。  不審に思った住民が通報すると、早速、二人の警察官が駆け付けた。  警察官だけではなく、野次馬も駆けつけている。 「何だ? これは……」 「何が起こるかわからないから、近づかないように!」  不審物に近づこうとする野次馬達を警察官が制止する。  野次馬達が見守る中、一人の警察官が、不審物を解体する。  ――嫌な予感がする。  解体しながら警察官はそう思った。  不審物の解体は簡単だった。結んで閉じたビニール袋の口に、風船から伸びている紐をくくりつけているだけだったから。  ビニール袋の口を開けると、周囲に悪臭が広がった。 「くさっ!」 「くせえ!」  野次馬達は鼻をつまみながら、手を鼻の前で振りながら、顔をしかめて口々に叫んだ。  ビニール袋の中には泥のようなものが入っている。 「こ、これは……」  解体にあたった警察官が、鼻をつまみながら言った。 「うんこだな。これ」  背後から、もう一人の警察官が声をかけた。 「先輩! うんこですか!?」 「どう見たって、そうだろ」  先輩の警察官は、鼻をつまみつつも、落ち着いた口調で答える。その落ち着きっぷりは、経験が深いからなのか、それとも、元からなのかはわからない。
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