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「しかし、なんでこんなものが……」
解体にあたった警察官が、そう言うと、
「あんの……」
群衆の中から、一人の男が手を上げながら、警察官達の前に出た。
男は農夫らしく、軽く土で汚れた質素な服に身を包んでいる。日頃、屋外で作業をしているからか、日焼けして、小麦色の肌をしている。
「何か、心当たりが?」
先輩警察官がそう尋ねると、男は
「今朝、同ずような風船が北の方から飛んでくるのを見かけただ」
と答えた。なまりの入った言葉だ。この地域特有の話し方だろう。
「北の方から?」
「そうだ。北の方からだ」
「ここから、北の方にはN国がある。ということは、送り主はN国の人間か?」
先輩警察官がそんなことを考えていると――
「先輩! こんなものを見つけました!」
解体にあたった警察官の手には一枚の封筒がある。袋の中から見つけたのだ。
封筒は糞便で汚れていたが、彼がティッシュで取り除いた。消毒しなかったのは、文字が消えないようにするためだろう。
「メッセージでも入っているのかもしれんな。開けてみろ」
「はい」
開封すると、中には手紙らしきものが入っていた。
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