ぶっ壊し

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ぶっ壊し

「さて、ここがサーバー棟か」  タフ・ボーイは島の東にあって風通しのいい場所に建つ5階建ての黒いビルに来ていた。 「凄いなぁ。ちゃんと正面ゲートから認証システムがある。ま……僕には無意味だけどね」    右手を軽く後ろに引き、そのままガラスへ叩きつける。目にも止まらぬ速さの一撃に、ガラス扉は一撃のもとに砕け散った。激しく鳴り響く非常ベルの音。 「さて……上から順にいくか。その方が話が早いし」  まるでカンガルーかチーターのようにジャンプを繰り返して狭い階段を駆け上がる。そして玄関同様厳重にロックされているドアを事もなげにぶち壊してみせた。 「この手のハンドルは引き千切ってしまえば中側からシリンダーが簡単に抜けるからね。楽なモンさ」  部屋の内部には大量のザーバーラックが冷却ファンの風切り音とLEDの点滅を繰り返している。まるで血管のごとく走り巡るLANと光ケーブル。 「ははは! 壊しがいがありそうだなぁ!」  言葉より先に手が出ていた。むしり取ったケーブルがバチバチと火花を上げる。 「そぉれ!」  一瞬のもとに繰り出される猛烈な一撃がサーバーをまるでクラッカーのごとく粉々に砕いていく。バキバキと音を立てながらラックがひん曲がっていく。 「あはは! サイコー! どれだけの被害になったかと思うと嬉しくて仕方ないよ! 続けていくぞぉ!」  鳴り続ける警報音がタフ・ボーイの戦意を更に上げていく。  フロア全体を埋め尽くすサーバー群のことごとくが唯の鉄くずになるまで、僅か数分のことだった。  これでかなりの地域とのネットワークが遮断されたことだろう。 「さぁ、次へ行ってみよう!」  その勢いのままにタフ・ボーイが1つ下の階へと降りる。上の階での火災を感知したためなのか、ドアは開きっぱなしになっている。 「壊す手間が省けたな!」  タフ・ボーイはそのまま飛び込み、勢いそのままに激しく点滅を繰り返しているサーバーや電源装置を破壊して回る。止めに入る警備員は誰もいない。 「ふん! 止めにくる人間がいないというのはちょっと気が抜けるかな?」  入口に目をやったときだった。 「おや? ガラスドアだったところがシャッターに変わっている?」  次の瞬間、タフ・ボーイに軽いめまいが疾走った。 「しまった! もしかしてこれは」  気がついたときは遅かった。呼吸が急激に粗くなって手足に痺れが走り出す。 「……コータローが『注意しろ』と言っていたか!」  普通の消火剤を使うと機材に2次被害がでるサーバー室などでは、消火のために二酸化炭素を噴出して窒息消火を図る場合が多い。 「まずい! 何とか脱出しないと」  慌ててフラフラの足のままにシャッターへ向かったときだった。 《あんたかい、タフ・ボーイとかいう小僧は》  部屋のスピーカーに老婆の声が流れる。 《ワシの名前は『グランド・マザー』。さぁ、さっさと降伏するんだね。私等の下僕になるというのなら、命だけは助けてやってもいいんだよぉ?》
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