巨体の極み

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巨体の極み

「はぁ、はぁ! えらいこっちゃですぜマッカーの旦那!」  アキマが走りながら夜の闇に黒煙を上げる建物を指差す。 「サーバー棟が倒壊しかけとる! くそ、あのクソババア! 高い金貰っておきながらガキ一匹止められへんかったか!」 「ディーラー棟からも何の連絡がない。イミューニーもやられたようでっせ」  スマホを片手にカナイマが息を切らせる。 「くそっ! 仕方ない、ここは一旦マルモーケの本島へ脱出や。何、銀行の残高さえ残っとったらナンぼでもやり直せるでな! とにかく埠頭へ行かんと」  苛つく3人が埠頭の入口に辿り着くと、そこには一人の男がでんと立ちふさがっていた。 「貴様らがその『悪党3人組』とやらか?」  常人の3倍はある巨体。そう、チーム・ジャークス最後の一人『ガネーシャ』だ。 「お、お前は!」  たじろぐ3人。 「心配するな。この紳士は貴様らごとき虫けらに用事なぞない。それより『ヒッポー・タマス』とやらは何処にいるんだ? 島で騒ぎが起これば必ず出てくると聞いたのだが」 「……くるさ」  カナイマが何かのスイッチを手に握っている。 「さっき、檻の施錠を開けた。奴は鼻が利くからすぐにこっちへ向かってくるはずよ」  冷汗を吹き出しながらもにやりと笑ったその背後だった。 「むう。か」  建物の合間から手の先が覗いた。『ありえない高さ』  ズン……と足音が地面に響く。コツンでもなくドスンでもなく、ズン……と沈み込む低い足音。  素足だった。なるほど、あの足では合う靴も無いだろうしすぐに摩耗して潰れることだろう。  服は着ている。硬いデニム生地らしいが、その端っこは解れている。その巨体で地面をゴロつけば、そうなるのは間違いあるまい。  幾分かごつごつしている、灰色の肌は極めて特異だ。そして何より頭が。  身体の大きさに合わない、肩幅ほどもある巨大な頭。そしてその突き出た口には柱のような牙が顔を覗かせている。  体重は1.2トンに及ぶとされ、身長は4メートルを超えるとされる。 「フォオォォ……」  その鼻息だけで寒気がするほどの迫力。『2足歩行する世界最大の生物』、ヒッポー・タマスだ。   「よくきた、ヒッポー・タマス! はお前の食事を横取りするためにやってきたんだ! 殺して構わん! 叩き潰せ」  マッカーがヒッポー・タマスを煽る。理解できていてるのかどうか分からないが、ヒッポー・タマスがガネーシャを認識したのは間違いないようだ。一直線に歩み寄っていく。 「なるほど『3倍の体格差』とはこういう具合に見えるものか」  ガネーシャも一歩とて引かずに立ちふさがる。 「だが、下賤と紳士にはがあることを見せてやるよ」
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