狂宴の終焉

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狂宴の終焉

 ヒッポー・タマスの選択は単純だった。  掴んだガネーシャの身体を前にして巨大な口をあんぐりと開けて見せる。まるで地獄の蓋が開いたような。 「このヒトモドキ実験体めが!」  ガネーシャが全身の力を振り絞るも、その馬鹿力はびくともしない。  聞いた話ではヒッポー・タマスもスーパー・クロコダイルのように極秘裏に進むバイオハイブリッド兵士研究の実験体として作られた『一人』だという。だがもはやこのレベルになると人間の定義すら怪しい。  「グオオ!」  信じられないほど巨大な口に、ガネーシャの巨体が押し込まれていく。やがて完全に喉の奥へと消えていってしまった。 「よっしゃ! やっぱり最後はパワーと体格の差やで!」  遠巻きに見ていたマッカーたちが歓喜の叫びを上げる。  と、そのとき。 「いいや、そう簡単には潰されんよ。あのガネーシャという男はな」  マッカーたちの背後にいたのは、完全装備のコータローだった。 「うわっ! て、テメーは!」 「ちょっと会わねー間に口の聞き方も忘れたか? 目上は『兄貴』って呼ぶもんだぜ」  ライフルは肩に担いだまま。 「や、やかましい! 何を偉そうにしやがって! おめーもあの筋肉ダルマみたいに喰われとけや!」  アキマが怒鳴りながらヒッポー・タマスを指差す。すると。 「あ、あれ?」  何やら様子が可怪しい。ヒッポー・タマスが地面に這いつくばり、何か唸り声を上げている。 「でも食ったんじゃねぇのか? 飼い主として餌の管理は責任持たんとなぁ」  じっと見つめるコータローの視線の先、突然にヒッポー・タマスが「グハ!」と叫びながら吐血した。大きな口の端からバタバタと落ちる鮮血。  続いて「グヘェ!」と叫びながら腹の中の物を全て吐き出してしまった。辺りに広がる腐敗臭。そして。 「やれやれ、とても……紳士的とは言えんな。いや、何としてでも活路を見出す覚悟もまた『紳士』かな?」  返り血で全身血塗れになったガネーシャがフラリと立ち上がる。 「何があったんだ!」  叫ぶマッカーに、ガネーシャがニタリと笑う。 「胃壁に噛みついてやった。あと、手当たり次第に引き千切ったりとかな」  さしもの怪物とて内蔵まで強固な訳では無い。その激痛はさぞ効いたことだろう。ヒッポー・タマスはぐったりしたまま地面に寝そべっている。 「TKО勝ちってことでいいかな、コータロー」  高く突き上げる拳。 「ああ。人類最強の称号は間違いなくあんただ、ミスター・ガネーシャ」 「さて」  コータローがマッカーたちの方へ振り返る。 「あとはお前たちの処分だけだ」
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