メンバー集合

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メンバー集合

 南極から死香婦人と同行し、メルボルンでスーパークロコダイルとタフ・ボーイの二人と合流したコータローはオーストラリアから日本に向かうLNG船で目的地を目指していた。    目的地のマルモーケ共和国には大型機が発着できる空港がないこともあるが、死香婦人を長時間搬送するにはマイナス80℃という低温環境が必要になる。  そのため気体の天然ガスを液化させるほど強力な冷凍能力を持つLNG船が唯一の移動方法だったのだ。  やがて船がマルモーケの付近を通過する際、完全防護服に身を包んだ死香婦人とともに大型クルーザーへと乗り換えた。  ここで全員が初めて顔合わせとなる。 「やぁ、コータロー。遅かったな」  巨体を夜のデッキに横たわらせていたのはガネーシャだ。 「いい船だ。何より狭くないのがいい。それと素性のいい酒が揃っている。待ってる間は実に快適だったよ」 「儂の鍼は準備万端だ。いつでも行ける」  止命鍼師はデッキ沿いに座り込んでいた。 「戦死した上官の口癖がな」  スーパークロダイルの巨体と異様な姿はここでも目立つ。 「『何故悪人が減らないか知っているか? それは正義が怠慢だからだ』だった。私は他人の正義が怠慢な分を補わねばならんのだ」 「あの向こうに見える灯りが『その島』かい? 暴れがいがあると嬉しいなぁ」  デッキの先端でタフ・ボーイが頭を海に乗り出している。 「ああ、この防護服の窮屈なこと。これを着ていると飲食もできないし、呼吸も苦しいの。早く目的地に着けて欲しいんだけど」  死香婦人だけは不満なようだが。 「皆さんお待ちかねのようで。ご心配なく、船はこのままカジノアイランドに接岸させて作戦開始なのでね」  コータローが指差す先に港が見えてきている。 「作戦スケジュールは事前に配ってある通り……」 「ひとつ聞きたいんだかね」   止命鍼師が口を挟む。 「なんでコータローさんはこんな危険な任務に就いているんだ? どう考えても儂らとは戦力に差がありすぎるが」 「……首謀者のモウカリ・マッカーとその手下のアキマ・ヘンナーとカナイマ・ヘンナーの3人は元々オレの舎弟だったんだ。だが組織の金をチョロまかしとるんが分かって破門したんだがな」  逃亡先のマルモーケで第二のビジネスを始めて大儲けに至ったわけだ。 「腹立たしいことに俺は『監督責任をとれ』と詰めらているんだ。この世界に仁義を通すのは絶対だからな。逃げられんねーんだよ。畜生め」  ホルダーの弾丸を確認し直し、コータローが毒づく。 「『奴らを生きて島から出すな』って訳でな。ケジメをとりに行かねーとよ」
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