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ギルド、という単語に反応して身体がビクッと震える。いくら幻の会話といえど、怖いものは怖い。ん?ていうか、誰が誰と会話してる……?
頭が働かない。大きな手に優しく背中を撫でられて、安心する。
「大丈夫だよ、暗殺ギルドは全て片付けた。これまで使えるから放っておいたが、私や君に害をなすものは例外だ。さぁ、帰ろう私たちの家に」
「おれ、たちの、家……?」
「もちろんだよ。見なかったのか?アクアの部屋はそのままだ。もう逃げなくていいから、どうか帰ってきてくれ」
「ん……」
そうして気づけばアクアは、ブラッドとの家に戻ってきていた。
ブラッドと一度別れてからの発情期はひどい。全然自分でコントロールできないし、記憶も曖昧になる。
よく分からないまま連れ戻され、ここに居ていいと言われてまた一緒に住み始めた。就職先には申し訳ないが、ブラッドから話を通してもらった。
暗殺の仕事もないから、本当にずーっと家にいる。もう大丈夫だと言われたから大丈夫なんだろうけど、このままではボケそうなほど平和な毎日。
変化はもうひとつあった。朝食じゃなくても、ブラッドが構ってくるようになったのだ。
「アクア、街で流行っている菓子を手に入れたんだ。一緒に食べないか……?」
「はい、旦那さま」
「くっ。かわ……!」
アクアは嬉しかった。ちょっと前までは不干渉が嬉しかったのに、変な話。ブラッドの服の裾をちょこっと握って付いていくと、彼はなぜか悶える。
これも最近の変化かもしれない。いつでもブラッドに触れたいと思ってしまう。
この感情がなんなのか分からない。これが家族ってもの?
「アクアさん、馬鹿なんですか? どう見ても好きじゃん」
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