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 アクアは屋敷の使用人が用意してくれたものをいつもそのまま着ている。  丈が長いワンピース型のパジャマは一般的に可愛らしいと言われるデザインかもしれないが、アクアは着るものにこだわりがない。どんな素材なのか知らないけど、薄くて着心地がいいことだけは分かる。  ブラッドは逆にパジャマのズボンだけを履いていて、同素材のガウンを羽織っていた。男らしく筋肉で隆起する胸板が見えている。  いつもきっちりとシャツを着込んでいる彼の無防備な姿に、アクアはくらくらした。 (旦那さまの色気、マシマシすぎる……!)  ほんのりと頬を桃色に染めたアクアは、ブラッドに勧められてソファに腰かけた。少し俯いて、ちゃんと話さなければならないと改めて決心する。  寝るときは三つ編みにまとめている金色の髪の先が、視界に映った。両手でパジャマを握りしめる。 「旦那さま……いや、ブラッドさま。結婚の契約の話なんです」 「まじ天使……はっ、え?なんだって?」  ブラッドのことになると、アクアは途端に涙腺が弱くなる。彼が別の人を屋敷に迎えると思ったときの気持ちが蘇ってきて、視界が海みたいにゆらゆらと揺れた。   「おれ、好きな人ができたみたいで……ブラッドさまと、わっ、別れなければ……なりません……ぐす」 「無理!!!」  大声で即答したブラッドは、アクアまで数歩の距離を詰め、目の前でひざまずく。強く握りしめていたアクアの手を取り、下から懇願するように見上げてきた。  潤む視界に、深いグリーンの瞳が月のように浮かんで見えた。 「あ、アクア……私は君に気持ちを伝えなければならないと……そのために焦って、さいきん距離を詰めすぎたかもしれない。嫌だったか?」 「ううん、嬉かった……」
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