義理の兄に恋をしている

6/8
前へ
/8ページ
次へ
 悠乃の何処か自信満々な態度に、和臣が笑った。それが子供扱いされていると感じてしまって、悠乃はぷくぅと頬を膨らませる。 「子供扱いした!」  ぽかぽかと和臣の頭をたたきつつ、悠乃は抗議する。  和臣はそんな悠乃を見ても、愛おしそうに笑っていた。 「俺ね、妹か弟が欲しかったんだ」  彼が悠乃の背中に腕を回してそう言う。その言葉に、悠乃はぽかんとした。 「でも、諦めてた。……悠乃と一緒に暮らせて、嬉しいよ」  きっと、こういう風に笑うから。同年代の女の子たちは彼に恋い焦がれるのだろう。  それを実感しつつ、悠乃は俯く。しばらくして、顔を上げて、口を開いた。 「悠乃も、お義兄ちゃんが出来たこと、嬉しいよ」  その言葉は正真正銘本当の気持ち。  この日から、悠乃は少しずつではあるが、和臣と栞子を家族として理解するようになった。  もちろん大好きな父のことも忘れない。  家族四人、いつまでも幸せに暮らしていければいいと、思っていたのに――。 「悠乃!」  悠乃が十九歳、和臣が二十三歳のとき、両親は落石事故に巻き込まれ、亡くなった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

139人が本棚に入れています
本棚に追加