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悠乃の何処か自信満々な態度に、和臣が笑った。それが子供扱いされていると感じてしまって、悠乃はぷくぅと頬を膨らませる。
「子供扱いした!」
ぽかぽかと和臣の頭をたたきつつ、悠乃は抗議する。
和臣はそんな悠乃を見ても、愛おしそうに笑っていた。
「俺ね、妹か弟が欲しかったんだ」
彼が悠乃の背中に腕を回してそう言う。その言葉に、悠乃はぽかんとした。
「でも、諦めてた。……悠乃と一緒に暮らせて、嬉しいよ」
きっと、こういう風に笑うから。同年代の女の子たちは彼に恋い焦がれるのだろう。
それを実感しつつ、悠乃は俯く。しばらくして、顔を上げて、口を開いた。
「悠乃も、お義兄ちゃんが出来たこと、嬉しいよ」
その言葉は正真正銘本当の気持ち。
この日から、悠乃は少しずつではあるが、和臣と栞子を家族として理解するようになった。
もちろん大好きな父のことも忘れない。
家族四人、いつまでも幸せに暮らしていければいいと、思っていたのに――。
「悠乃!」
悠乃が十九歳、和臣が二十三歳のとき、両親は落石事故に巻き込まれ、亡くなった。
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