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しかし、両親が亡くなっても、悲しみに暮れる間などなかった。
慌ただしく葬儀を済ませた悠乃たちを待っていたのは、今後の中園家の在り方についての会議だった。
虎視眈々と中園家の財産を狙う親族一同に、悠乃はすっかり疲弊してしまった。
「大体、悠乃さんになにが出来るというの? こんな小娘一人に家を任せられるものですか」
ある者は悠乃を指さして、そう言った。
「では、そうだな。……悠乃さんに、私の息子と結婚してもらうというのはどうだろうか?」
ある者は、自身の息子と悠乃の縁談を強引に進めようとした。
「それだと、あなたのところにしか利益がないわ。……ここは年配者に家を任せてもらうほうが」
口々に好き勝手に言う親族たちに、悠乃は疲れ果ててしまった。
親族会議は毎日のように行われる。その所為か、悠乃はその時間が来るのが怖くてたまらなくなった。
「義兄さま。……私、どうすればいいの?」
和臣は中園家の血を引いていないため、跡継ぎからは早々に排除という判断がされていた。
そのため、口を挟むことを許されていない。好き好きに言う親族たちに和臣自身も怒りを抱いているのは、悠乃にもよくわかっている。……彼は巻き込まれた立場だということも、わかっている。
だが、今の悠乃には和臣しか味方と呼べる存在がいなかったのだ。
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