第一章

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第一章

『私にとっての雨』  2年2組 沢崎陽花    突然ですが、皆さんは雨が好きですか。  私は嫌いです。  だって、せっかく肩を越えるまで伸ばした髪の毛がボサボサになるし、お気に入りのフリルスカートは先の方から水を吸ってどんどん重たくなるから。  でも、雨側は私の気持ちなんてちっとも理解してくれません。まぁ理解されたとしても気にせず降るのが雨です。その方が自然です。まさしく。  私は自他共に認める雨女です。母にも祖母にも小さい頃から「あなたは雨の女神様に愛されてるのね」と言われ続けてきました。それについての私からの反論は「多分雨の神様は男性だと思うよ」ということだけです。愛されていることは認めます。これは両親や祖父母から寵愛を受けて育ってきた私だからこそできる芸当なのかもしれません。私は愛されているということには敏感なのです。    皆さん、雨が好きですか。もし好きだと断言できる方がいたら、あなたはその理由を語ることができますか。  雨は別にあなたにだけ降り注いでいる訳ではありません。もちろん、私にだけ降り注いでいる訳でもありません。雨は広範囲に平等に降ります。あなたに雨が降り注ぐとき、それは私の頭上にも、言ってしまえばこの高岡町に住む人全員の頭上に降り注いでいるのです。そんなに平等なものをあなたは、本当に明確な理由を持って好きだと言えますか。  私は言えます。  語れます。  好きな理由も嫌いな理由も。  問われる度に別の理由を語れるくらい、私は雨と関わりが深い人生を歩んできたつもりです。  もし今語れと言われたならば、私は雨が嫌いな理由を語ります。  それは「雨は私たちが閉じ込められているという事実を如実に表すから」です。  これは単に雲が空を隠すから閉塞感があるという話ではありません。  雲が晴れたとき、青空はどこまでもいけそうな吹き抜けのようにそこにあります。けれど夜が更ければ私たちは、そこに空など本当は無く、あるのは青く見えただけの宇宙だということを思い知ることになります。原理は忘れました。私は文系なんです。  ずっと快晴なら、空と宇宙だけを交互に眺める日々ならそもそもこんな感覚には陥らないのかもしれません。けれど、私たちには雨がある。雨が身近にある以上、私はずっとこの閉塞感を味あわなければいけなくなる。  だから、雨は嫌いなんです。  そこまで私を閉じ込めるのに、どこまでも平等で公平であろうとする雨が。  皆さんは、好きなのかもしれませんけど。  
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