<2・自慢の糞は犬も食わぬ。>

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 正直、初めて見た時はがっかりしてしまったものだ。  髪の毛はぼさぼさで、無精ひげが生えっぱなし。服やマント、鎧は最高級のものを纏っていたが、お世辞にも衛生的には見えなかったからである。容姿もものすごく不細工というわけではないが、少なくとも新聞やテレビで見た“リーダー格”の者達と比べるとぱっとしない、極めて凡庸な中年男にしか見えなかったのだ。 『え、えっと……あの人が、本当に勇者様なの?』  集まった群衆の中。思わず呟いてしまったマナの声が聞こえたのだろう。勇者はこちらを見てにいっと笑い、こちらに見せつけるようにブレスレットを翳してきたのである。 『おう、そうともさ。なんだいお嬢ちゃん。これが見えねえかい?』 『あ、ご、ごめんなさい。私が知っていた勇者様とイメージが違っていたものだから。申し訳ありません』  慌てて謝罪し、頭を下げるマナ。それを見て、誤魔化すように村長夫妻も一歩前に進み出たのだった。 『よくぞ、こんな辺鄙な村にいらっしゃってくださいました、勇者様!我々としましても、世界を救ってくださった勇者様とお会いできること、実に光栄でございます。このたびは、どういった用件でこの村に?どうか、歓迎の宴を催させてはいただけませんでしょうか?』 『用件……ん-そうだなあ。……というか、歓迎会してくれんのか。へえ……』  勇者に会いたいと、そう思っていた。  しかし、後に“アガネ”と名乗る勇者は正直なところ、初見から良いイメージはなかったのである  煙草で黄ばんだ歯。にやにやとした、まるで家畜でも見るような見下した目。その視線が最初から、エルフの女性達の胸を中心に注がれていることに気付いてしまったからかもしれない。  厭らしい。そして、善意と正義感に満ち溢れた勇者のイメージとはあまりにも程遠い。  それでもどうにか笑顔を貼り付ける私達に、彼は少し考えた後こう言ったのだった。 『一番広いパーティ会場を貸し切りにしてくれや。でもって……そこに村で特に綺麗な、二十代の姉ちゃんたちを集めてくれよ。ハーレムってのをな、一度経験してみたかったんだよあな。ああ、できれば巨乳で、ケツもでけえ姉ちゃんたちがいいな。そこのお姉ちゃんとか、すげえいいと思うんだよなあ』 『え』  あまりにも明け透けな物言いに、その場にいた全員が固まってしまった。  確かに好色そうな見た目だし、祝いの席で美しい女性に囲まれたいと思うのは男性として当たり前のことなのかもしれない。だとしても、言い方ってものはある。何より、姉は既に婚約指輪を指にはめている。既婚者の女性ならば尚更、そのような誘いに嫌悪感を抱くのは当然だろう。  ところが。
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