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* * *
「………寝るわ」
「……は、」
「おやすみ」
「……えぇ??」
離れた後、中條君を見つめたまま惚けていた私に、背を向けて放たれた言葉がこれ。
唖然とする私をよそに、彼は少しもこちらを向くことなく、あっという間に寝息を立てて眠ってしまった。
そっか…。
きっとこいつと私じゃ、キスの重みが違うんだ。
毎回、相手が違うようなクズ男にとって、キスなんて当たり前で、究極、握手みたいなものなのかもしれない。
分かりきっていることだったのに、胸の底がギュッと絞られるように痛んだ。
…………なによこれ。非常に不本意だ。
いいのよ。それならそれで結構。私にとっても意味なんかないんだから!
これは、こんな奴に心が動いてしまった私の失態。………もう忘れよう!
きれいさっぱり片付けようとする私の思考とは裏腹に、胸の疼きは収まらない。
入念にクズ対策もしたはずなのに…、結局、文句を言うことも、ぶっとばすこともできそうになかった…。
《7章 駆け引き》
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