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「ずるいなぁ〜、佐原さん」
愉しげに、非難めいた口調で。
「いいよ、しよっか。駆け引き」
―――なのに、酷く甘ったるい声が耳に絡みついた。
「聴いてみる?」
「………っ」
唐突な言葉の意味を理解する前に、繋がれた手が引っ張られて彼の胸に押し当てられた。
ドクンドクン…と響く鼓動。
予想するよりも速いそれに頭が追いつかなくて、咄嗟に「酔ってるから?」なんて誤魔化すように口走った。
「どう思う?」
「え…、わかんない…」
「ん、俺も」
「………」
「なんでこんな馬鹿みたいに飲んだのか…、なんでここまで必死に引き留めてんのか…、なんでたかが手を握ったくらいで、こんなになってんのか…、正直、全然分かんねぇ」
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