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ぐんっと、引っ張られて近づいた。
でも、これは物理的に―――。
彼の顔が間近に迫る。
目線の先には、お互いの間で繋がる手。
絡め取られた指先が彼の指によってそっと撫でられた。
「なんでだと思う?この手も…、離したくないんだわ」
ここで彼の言う駆け引きをするのなら、手に入りそうで入らない、そんな距離感でいるのが正しいはずなのに…。
ぐらぐらと揺れる。
必死に保つ。
だけど、それも、「なぁ…、麻里ちゃん。教えてよ?」と耳元で甘く囁かれるだけで、もうダメだった。
ガラガラと崩れていく――――…。
落ちないなんて、難しい。
でも、これに応えてしまえば、その後は、私の手を取るあなたはいないんでしょう?
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