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自分からは何も言わなかった。
言わないように、唇をきつく結ぶので精一杯だった。
勝った――…とでも、思った?
そんな私を見つめて、緩やかに、ほくそ笑んだ彼を見てそう思った。
どうしようもなく悔しいと思ったのに…、彼の切れ長の目があまりにも柔らかく弛むから、見つめ合ったまま、動けなくなった。
「やっぱかわいいわ…」
「……え?」
「麻里ちゃん」
「は…」
唐突な発言の意味が分からない。
脈絡なく、どうした?
いや、それ以前に、さっきからなんで急に麻里ちゃん呼びなのよ???
ツッコミどころは満載なんだけど、ポンと優しく落とされた声の破壊力がすごすぎて、今までの流れの記憶が全部吹き飛んでしまった。
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