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「佐原さん」
すぐに呼ばれた声に振り返ると、中條君が息を切らせて走ってくる。
「遅くなってごめんね、あの…」
「そういうの後でいい。とにかく頂戴」
「あ、はい。でも、会議…」
「始まってるから、それじゃ…」
資料の束を受け取ると、踵を返して全速力でもと来た道を戻っていく。
はやっ…。
あっという間に小さくなった背中を見送って、ずん…っと、心が重くなった。
あーあ…、また失敗しちゃった…。
だめだなぁ…。
不純な動機で、自分の実力以上の会社に入社してしまった報いなのかもしれない。
頑張ればなんとかなると思ったけど、考えが甘かった。
結局、私って何もできないんだよね…。迷惑かけてばっかじゃん…。
結構本気で気合いを入れていただけに、心が折れそうだ。
泣きたくなる気持ちを抑えて、ひたすらに帰り道を探した。
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