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4.庄屋の息子(3)
踵を返し、家に戻ろうとした田之介。
その耳に、ぽつりと呟く伽耶の声が飛び込みました。
「わたしが、お山を下りたから……」
眉を顰め、再び向き直る田之介。
藤吉も怪訝な顔をして、伽耶を見つめます。
「藤吉さんの、田が……」
泣き出しそうな伽耶の肩を、藤吉はぽん、と叩きます。
「はは、何言ってんだ伽耶、お前ぇが気にすることなんか、何にも……」
「ごめんなさい、わたし……」
慰める藤吉の言葉を遮って、伽耶は家のほうに走り去って行きました。
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