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6.涙雨(4)
藤吉は伽耶を目指して濁流を進みます。
向こう岸にはっきりと見えてくる、伽耶の姿。
幾度も流されながら、藤吉はただ伽耶を目指して泳ぎました。
川岸に急ぐ伽耶。
両手を伸ばし、藤吉の手を握り思い切り引き上げた伽耶は、泣きながら微笑みました。
「藤吉さん、藤吉さん、藤吉さん……!」
「伽耶……伽耶……!」
固く抱き合おうとした二人は、もはや互いの腕が無いことに気付きます。
ぴったりと身を沿わせた二人は見つめ合い、強く唇を重ね――再び視線を合わせたその時には、互いの全身が二体の大きな白蛇に変じておりました。
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