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2.白蛇(2)
大きな獲物に心を移した鳶は、山鼠の死骸を掴み空高く舞い上がりました。
小さな白蛇は、藤吉に命を救われたのでございます。
駆け寄る藤吉をじっと見上げた白蛇は、やがて藤吉に背を向け野原を進みだしました。
けれどもどういうわけでしょう。
わずかに進んでは立ち止まり、振り返り、また進んでは立ち止まり、振り返り――まるで藤吉を呼んでいるような素振りを見せるではありませんか。
藤吉の中で、無邪気な童の心が浮き立ちます。
藤吉は久方ぶりに目を輝かせながら、白蛇の後を付いて行きました。
白蛇は幾度も振り返りながら、やがて藤吉を小さな沢のほとりに導きます。
こんなとこ、あったのか。
藤吉は目を見張りました。
そこにはたわわに実を下げた枇杷の木が、一面に生えていたのです。
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