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幕末の章
高野鉄次郎と山浦恭平は、防具の奥に光る互いの目をじっと見つめていた。相手の切っ先も視界の端に入れ、いつでも出方を察知できるようにする。
「始め!」
声がかかっても、二人はすぐには動かなかった。
今日の争点は、単なる勝ち負けではない。「良い試合」を見せることが、勝敗と同じかそれ以上に大事なのだ。それを二人ともわかっているから、なんとなく緊張して調子が出ない。
新選組の入隊試験。二人は今、この時に望みを懸けていた。人生を左右するといっても過言ではないほどの、正念場だった。
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