幕末の章

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「ああ。まだ粗削りではあるが剣術の腕前も申し分ないし、人となりもよくわかっているから安心できる。あちらは清太郎殿もいることだし嫁にやっても仕方がないが、婿ならあるいは、とな。なあに、単なる思い付き、戯言だ。鉄次郎にも縫にも絶対言うなよ」   (い、言いたい……!)  本気かどうかはわからないが、鉄次郎が縫を憎からず思っていることを恭平はよくわかっていた。教えてあげたいが、もちろん軽々しく本人に言えるはずもなく。ある意味、入隊試験合格よりも難しい試練かもしれない。 「まあ、他にも門人の伝手をたどれば何か良縁もあるだろう。道場のことはなんとかなる。武者修行だと思って、行ってきなさい」 「ありがとうございます……!」  恭平は深々と頭を下げた。このような急な話を承諾して送り出してくれる父に、心から感謝した。  
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