幕末の章

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 全員の試合が終わり、土方は「合格者を発表する」と告げた。鉄次郎と恭平は祈るように拳を握りしめた。きっと一緒に合格できるはずだ。 「木村広太、中山重蔵、吉村寛一郎、山浦恭平……」  恭平の顔がパッと明るくなった。同時に、心配そうに鉄次郎を見た。土方はその後も名前を読み上げていくが、鉄次郎の名は最後まで呼ばれなかった。 「ひ、土方さま、お待ちください……!」  いいよ恭ちゃん、と引き留める鉄次郎を振り払いながら、恭平は土方の前に進み出た。「ん?」と面倒くさそうな顔をする土方に怯まず、恭平は訴えた。 「確かに、試合では俺が勝ちましたが、鉄っちゃ……高野は、いつもは俺より強いし、それに、志の高い男なんです。新選組に入ろうって先に言ったのも鉄っちゃんで……!」  土方はふう、とため息をついた。 「高野の剣には焦りが見えた。戦場で焦って剣を振れば、まず命はない」  鉄次郎はぐっと口をつぐんだ。図星をつかれた。だが、恭平はなお食い下がろうとする。
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