維新の章

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 幕府というのは、絶対的にそこにあるものだった。幕府があるという前提で、皆例外なく今日まで生きてきた。二百六十年間、江戸には将軍様がいて、そのお膝元には百万の民が住む町があって。その当たり前が揺らぐのかと思うと、鉄次郎はなんだか体の力が抜けていくようだった。  恭平は、最初の驚愕をすでにやり過ごしたからか、落ち着いた様子で「これからどうなっちゃうんだろうね」と疑問を投げかけた。 「というか新選組って、あの時入ってたらどうなってたんだろ……俺、行かなくてよかったかも」  言われて、鉄次郎はハッとした。確かに、もとはといえば新選組は将軍警護のための組織として発足した京の治安維持をつとめる組織だ。   「うーん……将軍様の元で働いていたわけだし……解散になるのかなあ」 「そっか。じゃあ、どっちにしても二年足らずでお役御免になってたってことか」 「けど、それを言ったらみんな同じだよな。武士は誰に仕えたらいいんだって話になるし、このあたりにはお城や大奥で使うものを売ったり作ったりしてる店もたくさんあるんだし」    これからどうなってしまうのか。それは、日本中の誰もが抱いた疑問だった。  
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