維新の章

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 市之進は清太郎が相手だと頑固になるところがあるから、折れることはないだろう。だが、父の考えはあまりにも杓子定規だと鉄次郎は思った。上からのお達しというが、その「上」が存在そのものから揺らいでいるのだ。確かに、「幕府がなくなった! 大変だ!」と騒ぎになっていたあの大政奉還から数か月、足元の生活が大きく変わるわけではなかったゆえ、実感が湧かないのも事実だった。けれど、この話においては清太郎の意見に分があるように思えた。  二人の会話の終了を察知し、そろそろずらかろうと数歩部屋から離れたところで襖の開く音がした。振り返ると、清太郎がそこに立っていた。 「鉄次郎、聞いていたのか」 「いや……」 「正直に申せ。聞いていたのだろう」 「す、すみませんでした」 「こちらへ来い」
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